ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
「な?! 婚約を破棄するなら、お前が慰謝料を払うんだろうが! いや、それよりもレダ。お前いつもと全然違うじゃないか」

 私の言葉に、ハティスは顔を真っ赤にして文句を言う。
 あらあら、唯一の取り柄である顔面が、酷い表情になっているわよ。

 そもそも、最初の言葉遣いが間違っているのだ。
 婚約を破棄する前に、解消や白紙という選択肢が当然ある。破棄となれば、どちらかが有責になるのだから、そうなれば目の前で不貞を見せつけたハティスが有責になるのは当然だろう。

「そうですね。私もいい加減気付いたんですよ。婚約者に馬鹿にされて、不貞をする度に何度も呼び出されては、好きでもない男に一方的な暴言を吐かれるのも、家族に理不尽に虐げられるのも、甘んじて受けている必要はない、って」
「な……な……」

 さっきから、な、しか言ってないわね、この男。
 まぁでも、そうもなるか。今までの私、レダ・ルイジアーナは、薄幸が服着て歩いているような女だったものね。

 正直、ついさっきのあの衝撃がなければ、今も薄幸の大安売りのような状態だったろう。
 家族に常に罵詈雑言と共に虐げられ、休日は家の中の労働をさせられ、婚約者には堂々と不貞をされ。よくもこんな状況で、耐え忍んできたものだわ。
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