ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
 私がこの家の使用人を辞めさせる権限がある、それだけではなく、次の仕事のための紹介状を書かないで追い出すことも可能であるという事実に気付いたのは、執事だけではなかった。
 その隣に立つ侍女頭は顔を青くしている。

 当然よね。私に今までしてきたこと、まぁ彼女は大方は忘れているかもしれないけれど、マズいことをした、とは理解しているでしょう。
 された方は、一つ残さず覚えているのにね。
 どの使用人になにをされたのか、今いる使用人も辞めた使用人も。そしてその筆頭が侍女頭だということも。

 紹介状がないということは、前の家で何かしらの問題を起こしたという証。
 貴族の家に次の雇用を頼むのは、とても難しくなる。

 私の言葉に、執事は急ぎお父様の執務室へ向かう。私はお茶に目線を落とした後、侍女頭を見た。
 ギース様のカップのお茶が半分になっていたのに動かないなんて、この侍女頭は仕事ができないのねぇ。

「閣下にいつまで冷めたお茶を飲ませるつもり?」

 我ながら性格が悪いなぁと思う。でも、やり返すなら今なのよ。
 自分が辞めさせられるかもしれない。今後の生殺与奪は目の前の相手が握っている。
 その恐怖を実感すれば良いわ。
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