ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
 今までのレダはそうやって、怯えながら生きてきたんだもの。
 自分より弱いものを嬲って楽しんできた。
 それがどういうことか、このあとこの屋敷の皆さんには、しっかりと体感していただかないとね。

 侍女頭は慌ててお茶を淹れる。
 ギース様は私と皆とのやり取りを無表情で見ているけれど、目の奥が笑っているのよね。
 この短時間の間に、彼の表情を読むことが得意になってきた。それもこれも、前世での人生経験のおかげな気がするけど。

 これまで耐えて耐えて生き抜いてきたレダは偉いと思う。
 よくも頑張ってきた、そう抱きしめてあげたい。

 でもね。 耐えても、我慢しても、誰も助けてはくれないの。
 声を出して、狡猾になって、自分で自分を助けてあげないと。

 そういうことを知ることすら、レダはなかった。
 自分で自分を愛することも、自分で自分を助けることも、それが当然の権利だと言うことも、彼女は知らなかった。

 前世を思い出した私はそれが当然の権利であることを知っている。
 自分で自分を助ける術も知っている。
 狡猾になることが悪いことではないことも理解している。

「さて」

 書類を持って戻ってきた執事から、それらを預かり机に広げる。

「皆さんが待ち望んでいた、私との決別の時がきましたわ」

 さぁ、裁きの時間よ。
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