ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~

7:さらばドアマットヒロインの亡霊よ 03

 さっさとこの家とお別れしたいけれど、その前にこれまでのレダを虐げてきた人たちに、きっちりとお礼をしないといけない。
 弱い者いじめ? そんなのブーメランでしかないわ。

 私は以前のレダと違って、執念深いし、やられたらやり返す主義なのよ。
 家中の使用人を呼び寄せ、お父様達の後ろに並ばせる。

「さて、まずはこの家の使用人ね。料理長のクウネ、副料理長のオヤツメ、それから料理見習いのチュクラン。私の食べる料理にわざわざ古い食材を入れてくれたり、味付けを酷くしてくれたり、量を少なくしてくれたり、ありがとう」

 むしろ、わざわざそんなことをするなんて、手間を増やしている分も含めて給料泥棒よね。

「あなた達の料理の腕や、料理人としての倫理観を鑑みるに、料理人を続けない方が良いのではないかしら?」
「な、なんてことを言うんですかっ! お口に合わなかっただけでしょう!」

 私の言葉に、料理長のクウネが反応する。
 そもそも許可もなく女主人に口答えをするなんて、この世界では許されないことだ。

「まぁ! ろくに料理も作れない上に、使用人としての常識もないのかしら。許可も得ず、女主人に話しかけるだなんて……」

 わざとらしくため息を吐いてから、眉を上げて彼女を見る。

「では聞くわ、クウネ」

 いつもと違う私の口調に、クウネがびくりと体を揺らせた。

「あなたは芽が出た上に生煮えのジャガイモの入ったシチューを、お父様に出したの? サラダにしわしわになってカビが生えたトマトを入れていたけれど、お兄様にも出した? 何ならあなた達はそれを食べたの? 私が見たあなた達の食事は、私が食べた分よりも量は多かったけれど……私には皿の半分しかシチューを入れていなかったわよね?」

 にっこりと笑って言えば、彼は顔を真っ青にしている。思い当たることしかないのだろう。
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