ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
「ついでに言えば、それを横で見ていたオヤツメも、運んだチュクランも、同罪よ。それをおかしいと思えない感覚は料理人には向いていないわ」

 食に関しては、死に直結する問題だ。いじめが許されていると勘違いしたとしても、やってはいけない線を越えている。食の安心は命の安心。
 こんなヤツがもしも他の屋敷で、同じようなことをしでかしたら、ヘタをしたら人死にがでるかもしれない。

 ……まぁ同じ事をできるような屋敷があるかはわからないけれど。

「そんなわけで退職いただくけれど、紹介状はこれね。この紹介状以外は書かないから、不要なら使わなくても結構よ」

 さらさらと書いたそこには、味覚と食材の目利きが不十分なため解雇、と記載した。
 解雇の時点で、貴族の屋敷には再就職は難しいだろう。

 とはいえ、手に職のある彼らだ。平民の食堂では雇ってもらえると思うので、真面目にやり直してもらいたい。──まぁ、給料はかなり下がるでしょうけれどね。知ったことか。

「さて、次はランドリーメイドのニッソーとアライン」

 料理人達から再び、並ぶ使用人達へと目線を向ける。

「あなたたち、随分と洗濯が苦手のようね。私に押しつけた洗濯物の量、覚えているかしら? おかげで私の手は、貴族令嬢とは思えないものになったけれど……。そんなに苦手な仕事をさせてしまって、申し訳なかったわ」
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