ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
 名前を呼ばれた二人は、年かさのいった女性だ。
 娘のような年齢のレダに、週末になるとシーツだのタオルだの、かさばって大きなものを洗わせていた。必死で洗っている横で、二人は笑いながらおしゃべりをして休憩をしていたのよね。

「断ったときには、足を引っかけて転ばせたり、私の下着をわざと入り口から見える場所に干したりして嫌がらせをしてきたこと、忘れていないわ」

 そう。レダも断ったりしたの。
 でも、嫌がらせをされたら心折れるわよね。家の中に味方がいない状態で、たった一人。本当にかわいそうだわ。

「でも安心して。あなたたちは洗濯が大好きだものね。好きなだけ洗濯ができるように、ボンフォツォネ男爵家に紹介状を書くわ」

 ボンフォツォネ男爵家とは、大家族で有名な貴族だ。
 前々男爵ご夫婦、前男爵ご夫婦、現男爵ご夫婦に、お子様が十六人もいるのに、領の収入が少なく、所謂貧乏貴族。

 なので使用人も最低限で、専属のランドリーメイドもいない。
 常に募集はかけているが、仕事量に対して給料が安すぎて誰もこないらしい。

「洗濯が大好きで、洗濯がしたいからそちらで働きたがっていると書いて、先方に送っておくわ。もちろん我が家からは解雇だから残ることはできないわよ」

 再就職先を紹介するだなんて、私はなんて親切なのかしら。
 二人はがっくりとしているけれど、十数年し続けた行為を一度も省みることなく続けていたのだから、自業自得でしょう。
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