ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
 ちょっと! ギース様がついに無表情が崩れかかってるじゃないの。
 そりゃ、公爵家の周りの貴族はこんなに間抜けじゃないものね。

 我が家がどうして古い家柄なのに、鳴かず飛ばずなのかが良くわかったでしょうねぇ。
 むしろ今まで良くも没落しないで済んでいた、と思うわ。

 前世で言えば、それまでの社長の頑張りで続いてきた中小企業が、無能な二代目の跡継ぎでも、それまでの人脈貯金などでどうにか生き残っている、みたいなものだろうか。

 ま、前世では三代目が会社を滅ぼすなんてのはよく言われていたし、私がいたあの会社もそうだった。
 ほんとあの時期は特に悲惨だったなー。三代目になった途端、その三代目の大学時代の合コン仲間に会社の株売っちゃって、社長だけが良い思いして、転職できる人は良かったけど、年齢的に転職できない人や、氷河期時代の就活にトラウマのある私たちはそのまま残って……。あぁ、思い出したら腹が立ってきた。

 あの社長の顔が、お父さまの顔に重なってきてしまいそう。
 全然違う顔だけど。今すぐ殴りたい!
 ……落ち着いて、私。

「そして、この書類を先方と確認し貴族院に提出したらそのまま、ルイジアーナ家と縁を切ることにしますから、こちらの書類にも」

 そこには、親子の縁を切り、今後いかなる事があっても、無関係である旨を明記した。

「レダ嬢は、随分と文書を作るのが上手だな」
「ええ。学園では法律文書の書き方なども学びました。領政専攻科でしたの」
「それは知らなかった。とても助かるな」
「ええ。今もとても助かってますし」

 やはり芸は身を助く、ではないけれど、知識は身を助く、だわ。
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