ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
 手に職をつけることは大切ね。レダは家では酷い扱いを受けていたし、他の貴族にも家での状況がそんなものだから、下に見られていた。
 けれど──だからこそ、勉強を頑張って知識を身につけていたのよ。よくやった。自分で自分を褒めてあげたい。
 いえ、この場合の私は自分だけれど他人でもあるわね。


「ではお父様、お兄様。このあとオルグナイト子爵家とコールレッド男爵家へは、貴族院を通じて契約書を提出いたします。立会人はギース・フォルティア公爵閣下。そちらを貴族院が受領しましたら、その後私はお二人とは他人となります。この三通の書類に、お父様のサインを」

 お父様は頷き、特に反論することもなくサインする。惜しむこともないだなんて、本当に他人以上に他人なんだなと感じた。
 会社の同僚が退職するときだって、もう少し惜しむものでしょうに。

 各書類の立会人の箇所には、ギース様のサインが入れられた。

「レダ嬢、何か持ち出すものは?」
「そうですねぇ。学園で使うものくらいかしら」
「それはあとで、家のものに持ち帰らせよう。女性騎士を派遣するから安心して欲しい。──それだけ?」

「ええ。お母様の形見は全てお父様とお兄様がお持ちですし、私のドレスはどれも薄汚れたものばかり。制服さえあれば、当面はしのげましょう」
「……っく、ははは!」
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