ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
 そう。
 伯爵家から籍を抜くということは、私は平民になる。
 婚約破棄と慰謝料については、籍を抜く前に受領登録されるので、私個人に紐づくから、貴族籍を抜けても受け取ることができるのだが、さすがに公爵家に嫁ぐとなると、平民は無理だ。

 うーん。割とギース様となら、うまく夫婦になれるかなぁなんて思い始めてきていたから、ちょっと残念。
 でも仕方ないわよね。
 私にとっての優先順位は、あの家と縁を切ることの方が上なんだもの。

「それは大丈夫だ」
「え、でもさすがに平民は」
「平民じゃないよ」
「は?」

 ギース様はちょうど入ってきた文官に、声をかける。
 おかっぱ頭の彼は、確かスンデルネ侯爵家の次男さんだわ。数年前の学園首席卒業者だから、顔を知っている。おかっぱ頭なのにイケメンに見えるの、顔面偏差値が高すぎるんじゃないかな。

 いやまって?
 この部屋、顔面偏差値が高い男性だらけよ。
 そして、スンデルネ侯爵家の彼の後に入ってきたのは、スジューラク公爵閣下。
 さっきから話題に出ている法務卿本人じゃない。

 慌てて立ち上がろうとしたけれど、皆に手で制されてしまった。
 全員同じタイミングで同じ所作だなんて、ちょっとコントみたいで笑いそうになる。
 必死で顔を作って、座り直したけれど、ギース様には気付かれたようで、肩を震わせていた。

「これは驚いた。堅物公爵なんて噂されるフォルティア卿が、笑いを堪えるなんて」
「スジューラク法務卿、私はいつも笑顔に溢れていますよ」
「そうだったそうだった」

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