ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~

11:公爵邸の使用人たち

 美しいアーチを象る門がゆっくりと開く。そこから先が見えないように木々が配置されているアプローチを馬車で抜けると、少し色の黒い石が詰まれた大きな建物が現れた。

 フォルティア公爵家のタウンハウスだ。

 貴族は王都にタウンハウスを持ち、領地にカントリーハウスを持つ。
 タウンハウスはいわば別荘で、普段は登城の必要がある者以外は、社交シーズン以外皆カントリーハウスに暮らしている。

 我が家は──いえ、元我が家のルイジアーナ伯爵家は、領地に前伯爵夫妻、つまり私の祖父母が暮らしているので、常にタウンハウスで生活をしていた。
 祖父母には一度も会ったことがない。彼ら彼女らから誕生日にカードを貰ったこともなければ、お兄様には届くプレゼントも、私にはないので、やはり同じように疎まれているのかもしれない。

 因みに母方は同じく伯爵家ではあるが、どうやら母は跡を継いだ兄と折り合いが悪かったらしく、こちらも一度も会ったことがない。つまり、私は周りに助けを求める相手もいなかったわけだ。まぁ、レダはあの状況を抜け出す方法なんて、考える思考能力も残っていなかったんだろうけれど。

「すごい……」

 石積みの美しい建物を前にすると、我が伯爵家の貧相さを痛感させられる。
 公爵家との格の違いを改めて感じてしまうのだ。

「今は貧乏公爵家だから、手が回らないところがいっぱいなんだ。許して欲しい」
「大丈夫ですよ! その為の私ですから」
「レダ嬢、言っておくがあなたが自ら掃除をする必要はないからな?」
「え? 嘘でしょ」
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