ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
「初日にそれを聞いても信じませんでしたけれどね。今なら良くわかります。奥様の啖呵は想像がつきますわ」
「自分で言っておいて何だけど、啖呵という言い回しは良くなかったかしら」

 マティが淹れてくれた美味しい紅茶を飲みながら、窓の外を見る。
 貧乏公爵家だと聞いていたけれど、とても穏やかに過ごしているので、とてもそうとは思えない。
 食事も、ギース様は豪勢でなくて済まない、なんて言っていたけれど、これまでの私の食事を考えれば贅沢すぎて目を回しそうなものだ。

──実際初日は、胃を慣らすために軽くして貰った。

「来週にはいよいよ領地に向かうし、私も今日からは領地の勉強をしなくちゃね」
「執事のソワに資料を用意させてあります」
「ありがとう」

 この一週間は、まずはこの公爵邸の人たちのことや、ルールなどを学んだ。女主人として、皆のことを知らないと、管理できないからね。

「皆、奥様が優しくて聡明な方で、感謝しております」
「感謝だなんて。まだ何もしていないわよ」
「それでも、私たちの話を一人一人聞いて下さったでしょう?」

 そう。私はこの一週間、公爵邸の人たちと一対一の面談をしたのだ。
 この辺は、前世の記憶が役にたった。クソみたいな上司を反面教師としてやっていけば良いとわかっているからね。
 こっちが相談しているのに、自分の苦労ばかりを話して、マウントをとるような人間にはなってはいけない。絶対にだ。

「そんなの、女主人として当然だわ」

 私の言葉に、マティはゆっくりと首を振る。
< 54 / 166 >

この作品をシェア

pagetop