ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
 とはいえ、領民もこの状況をわかっているので、少しだけ給料を減らさせて貰っているそうだ。
 それでも、クビにならないだけありがたい、と領民と領主は持ちつ持たれつで、支え合っている。

 広大な領地を持つ公爵家でありながら、そうした支え合いができるのは、やはり初代公爵である王弟殿下から連綿と続く信頼関係なのだろう。

「……ねぇ、いつ公爵邸につくの?」
「そうですね。あともう少々」

 さっきからもう馬車で10分くらいは走っている気がする。10分、とは言ったけど、この世界ではもっと別の言い方をする。
 面倒だから10分、って言っちゃう。

 門を入ったということは、ここはもう公爵邸の敷地だ。それを10分も馬車で移動するとは。
 もちろん、王都から来るときのようなスピードではなく、ゆっくりと走っている。

 そこからさらに5分くらいかな。そのくらいの体感乗っていると、ようやく公爵邸が現れた。

「……おっきすぎない?」
「そうですね。私は慣れてきましたが、それでも大きいと思います」

 お城か! と突っ込みたくなるような大きなお屋敷。
 いや、これはもうお城でしょう。

 石造りの建物は、王都と同じように少し黒ずんだ石。
 これは、この領地でとれるゴレル石だ。硬く建物に使いやすいが、そのわりに扱いやすいそうで、一時期は石切場が大盛況だったらしい。
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