ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
 車寄せに噴水があり、その周りを馬車が回り込むようになっている。

「噴水から水がでていないわね」
「清掃の手間をおさえているそうです」
「そうよね。お給金減らしているなら、仕事も減らさないと割に合わないわ」

 そう。給与を減らすなら仕事も減らせ。
 それが仕事における鉄則だ。
 逆もしかり。
 仕事を増やすなら、給与も増やせ。

 おっと、ブラック企業労働者の叫びが口から漏れそうになってしまった。

「レダ! ようこそ我が公爵邸に」

 馬車が到着すると、まさかのギース様直々に扉を開けてくださった。
 え、公爵閣下よね。そんなことしちゃって良いの?
 ちらりと御者を見れば、ちょっとあわあわしてしまっている。

「ギース様、御者の仕事をとってしまってはダメですよ」
「少しでも早くレダの顔を見たかったんだ。ほら、降りてきて」
「ちょっ、だからそうやってすぐに私を抱き上げるのやめてくださいってば」

「俺が抱きしめたいんだ。許してくれ」
「……公爵邸の人の前でだけですよ」
「ああ! ……善処する」
「そこは! 約束! して!」

 私の言葉に、ギース様の後ろに並ぶ使用人達が、皆輝くような笑顔を私に向けてきた。
 この笑顔、知っている……。タウンハウスの使用人と同じ表情だわ。
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