ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
 ギース様、あなた今までどれだけ能面で生きてきたのですか。

「疲れたろう? 今日はゆっくり休んで、明日から領内を回ろう」

 ギース様の言葉に、空を見上げる。
 確かに、太陽が傾いている今から回っても、たいした視察はできないだろう。
 領民たちも、家に帰りたいだろうし。

「はい。では明日は朝早くから出かけましょう。一刻も早く、領民の笑顔を取り戻したいです」
「やっぱりあなたと結婚して良かった」
「そうですか?」

「ああ。ここに来るまでにきっと、華やかさのない領地を通ってきたと思う。そこを通って思ってくれたことが、領民の笑顔を取り戻したい、なんだ。ありがたいよ」

 そんなに特別なことを言ったつもりはないんだけどね。
 やっぱり、領民が幸せならこちらも心置きなく幸せになれるし。

 別に世の中の人全員が幸せになって欲しいなんて思わない。
 ただ、私はタウンハウスで美味しいご飯を食べさせて貰ったし、ふかふかのベッドで寝かせて貰った。
 それは、領民がいるおかげなのだ。

 で、あればやはり、恩には報いるべきなのよね。
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