ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
 確かに、実家はともかく、公爵家のタウンハウスでも食事に魚が出てきたことがない。
 私の体力をつけるために、肉料理ばかりなのかと思っていたが、どうやらこの世界では魚を食す文化がないらしい。
 貝が出てきたことがあったから、油断していた。

「これは……鬼が出るか蛇が出るか」
「なんだ? どちらにしろ、出てくるものは怖いものだな」
「ふふふ。ギース様、海岸に近付きたいです。馬を降りても?」

「ああ。シュクリム!」
「は。奥様失礼いたします」
「えっ」

 今度はシュクリムに抱きかかえられて馬を降りることに。
 いや、確かに私一人では馬から降りることができなさそうだけどさ。

 私が降りた後、ギース様は「そこにいてくれ」と一声かけると、馬を近くの杭に近づけて留め置く。
 すぐにこちらに走ってくると、またしても私を抱き上げてしまう。

「ギース様?」
「海岸は危ないからな。俺にしっかり抱きついていろよ?」

 その言葉に、周りの従者はやっぱり良い笑顔。
 アッ、ハイ……。もうこれ、呆れてるんじゃないのかなぁ……。

「まぁ……良っか。とりあえず海辺まで連れて行ってください」
「任せろ」

 考えてみたら、海辺って砂浜で歩きにくいから今日はこれで良いかな、なんて打算的になってしまう。
 あれ? 私だんだん慣れてきてない?

 海辺の様子を見るに、貝も捕れそうだし、故郷で見たことのある海の感じだ。きっと魚も捕れるだろう。
 この辺に関しては、公爵邸に戻ったら、改めて意見交換が必要かな。
< 64 / 166 >

この作品をシェア

pagetop