ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
「先ほど提出した資料のうちの二冊目、その35ページからをご参照下さい。そちらに、私が先ほど申し上げた期間の、収入が記載されております。あわせて、その横には国庫に納めた税金も記載し、マイナス分については黒い三角を併記しております」

 三角記号がマイナスを表現するというのは、この国では使っていなかったが、ついついクセで書き込んでしまった。
 そうしたら、皆が見やすいしわかりやすいというので、結局それを使うことにしたのだ。
 特にこうした表記に決まりはないらしいので、今回は説明を付けることでそのまま提出している。

「あぁ、なるほど。これはわかりやすいね。この三角も良いなぁ。これ、今後うちでも使おう。スージュ君、よろしくね」
「畏まりました」

 あの疲れているイケメン、スージュって言うんだ。
 きっとどこかの貴族の次男か三男なんだろうな。お疲れ様です。この大蔵卿人使い荒そうな気がするわ。私の第六感だけど。

「災害にあったときから先月までのここから、マイナス計上のうちの五割を還付しよう。月日が経っているから、全額とはいかないよ。いいね?」
「十分にございます。大蔵卿、ありがとうございます」

 大蔵卿の言葉に、ギース様は目を見開く。
 そうしてゆっくりと瞬いた後、土下座する勢いで──この世界に土下座はないので──床に膝をつき、深く頭を下げた。
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