ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
「入っても良いか?」
「あ、はい!」

 思わず元気に返事をしたものだから、ギース様が笑いながら入ってきた。

「元気だな」
「いえ、そのちょっと緊張はしてます」
「だよな……。その、良いのか?」

「良いのか、とは」
「今日の今日で、とは、レダも想定外だろう?」

 そう言いながら、ギース様は上着を私に掛けてくれた。
 きっとぴらぴらのうっすうすの夜着が、目に入ったのだろう。

「まぁ、そうですね。ただ、私はあなたに抱かれること自体は嫌ではありません」
「レダ……!」
「ただ」

「ん? た、ただ?」
「万一すぐに妊娠をした場合、今の公爵領の状態では、と」
「ああ……」

 私の言葉に、ギース様も真面目な顔になる。

「正直なところを言えば」
「はい」
「今すぐにでも、レダを抱きたい」

「あ、はい」
「ただ、レダが言うように、今の我が公爵領の惨状では、安心して子を産み、育てることもできないだろう」

 彼の言葉に、ゆっくりと頷く。
 私たちは、先ずは領民の生活を安定させないといけないのだ。そのために、領内を馬で駆け回ることも多いだろう。
 呼ばれればすぐに様子を見に行く必要だってあるかもしれない。

「今夜は──うっ、こ、今夜は」

 これは、ギース様は理性と戦っているところね。

「ギース様。一つ布団で、抱きしめ合い、子作り以外のことをしましょう」

 あまりにも見ていられなくて、思わずそんな提案をしてしまった。
 具体的に何をどうするとは告げなくとも。
 ベッドの中で、私たちはお互いの存在を確認しあったのだった。
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