ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~

26:公爵様のイイ人

 タウンハウスから、公爵領のカントリーハウスに戻ってきた。
 王都では、無事に私達の婚姻届も受理されたので、これで名実共に公爵夫人となったわけだ。

 なんだかちょっと浮かれてしまいそうだけど、今の公爵領の状況はそれどころではない。
 気を引き締めないとね。

 なんて思っていると、カントリーハウスに戻って早々、領内のいたるところから良い報告が届いた。
 土壌改良であったり、漁であったりを指示していたが、どれも少しずつではあるが前進しているらしい。
 嬉しい限りだ。

 税金もかなり優遇してもらって、還付金も出ることになった。還付金を元手に、今度は新規事業と、右肩下がりの工業的な部分に手を付けないといけないわね。

「ギース様」

 執務室へ入ると、彼はいくつかの資料を確認している。
 覗き込めば──これは私に許可されている行為だ──領内の収支報告の一覧だった。

「ここ」

赤字になっている箇所を指差す。

「うん。これは土砂崩れで工房が埋まってしまったガラス工芸部門だね」
「ええ。第一次産業だけでは、天候不順のときに厳しくなります。そこで、工業を復活させたいと思っています」
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