本当の愛を知った御曹司ギタリストは歌姫を溺愛する
亜里沙は話を聞きながら、拳を握り締め唇を悔しそうに噛み、泣くまいと我慢している様子で胸が張り裂けそうになる。

「亜里沙、まず今日は俺の家においで」

亜里沙の瞳が揺れる。
わかってるよ。

「大丈夫。嫌がる事は絶対にしないから」

「ごめんね…」

「そういう時は、"ありがとう"で」

亜里沙は瞳を揺らし大きく広げ、一筋涙を流した。
そして俺を見て微笑む。

「ありがとう」

思わず抱きしめてやりたくなるのをグッと堪え、車までゆっくりと手を引いて戻った。

「大丈夫か?」

「う、うん! 大丈夫! さっきは急な事で驚いちゃって! いや、ビックリしたね! 本当びっくりしちゃう…っ」

助手席に乗った亜里沙は必死に明るい声を出すも、最後はフッと顔を外に向けてしまった。
< 109 / 307 >

この作品をシェア

pagetop