本当の愛を知った御曹司ギタリストは歌姫を溺愛する

いつものように適当に着てきた服に着替えて、キャップを深く被り外に出る。

意外とバレない。

へへへ。

別に芸能人でもなんでもないのに、なんて思って笑ってしまう。

「亜里沙」

するとおもむろに私の前に人が立ちはだかる。

え？

顔を上げるとそこにはブランド物の服に身を包み、お揃いのブランドのハンドバッグをもって、高いヒールを履いて真っ赤な口紅をつけた一人の女性が私を見て笑っていた。

「お、お母さん…？」

な、なんで…

もう１０年も音沙汰がなかったというのに…

父親が亡くなった時ですら何もなかった。

今更なんの用？

「亜里沙。あなたElysiumのギタリストと結婚だなんて。ふふふふ」

そう言って不自然に白い歯を見せて笑う。