本当の愛を知った御曹司ギタリストは歌姫を溺愛する
こんなんだから父親は裏でストレスを発散させるしかなかったんじゃないの?

今思えばこの人、自分だけはいつも綺麗な服を着ていた。

「それで?」

「亜里沙、お金ちょうだいな」

そう言って笑顔を作ったまま手のひらを私に差し出した。

「そのハンドバッグと服を売ればお金になるでしょ」

「やだもう亜里沙ったら。自分ばっかり贅沢するつもり?」

贅沢って…

「私お金ないよ」

それは本当だ。
私は結婚してから働いたお金は全て獅音に渡している。

私が渡されているのは獅音のカードであって、私のお金じゃない。

「嘘つくんじゃないわよ」

いや本当だし。
それに例えお金があっても一円たりとも渡したくないわ。

「お金に困ってるようには見えないけど?」

私は負けじと言い返す。
< 257 / 307 >

この作品をシェア

pagetop