黒澤くんの一途な愛


「ありがとう」


なんと、黒澤璃久が私に向かって深々と頭を下げた。


へ? 『ありがとう』って……。


この人にお礼を言われるだなんて思ってもみなかった私は、ポカンと呆気にとられる。


私、黒澤くんに感謝されるようなこと何かしたっけ?


「昨日、お前が助けてくれたばあちゃんは、俺の祖母なんだ」

「えっ。昨日のおばあさんって、黒澤くんのおばあちゃんなの!?」

「ああ。祖母は俺の唯一の肉親だから。感謝する」


失礼だけど、黒澤くんでも感謝の言葉を口にすることがあるんだ。


昨日、初対面でいきなり『出ていけ』って、ひどい言葉をかけられた私としては、意外だった。


黒澤くん、昨日もおばあさんのこと迎えに来てたみたいだし。


彼のことは全然詳しくないけれど、もしかしたら黒澤くんって、案外おばあちゃん思いの良い子だったりするのかな?


「あっ。お前、昨日の……!」

「あ……」


黒澤くんと話していると、昨日街で出会った銀髪ヤンキーがやって来た。


うそ。まさか、同じ学校だったなんて……!

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