黒澤くんの一途な愛
「ふはっ。お前は、正直な女だな」
彼は、クククッと珍しく声をあげて笑っていた。
「大丈夫だ。彼氏と言ってもフリだけで、キスとかそういうことはしないから安心しろ。彼氏というのは、お前のそばにいるための肩書きみたいなものだから」
「そうなの?」
「ああ。だから、もう泣くな。さっきも言ったように、俺がお前を全力で守ってやるから」
黒澤くんが、私の目尻の涙を親指で優しく拭ってくれる。
「璃久は、学園のトップで最強の男だから。表面上だけでも璃久の彼女となると、進藤だけでなく他の男子たちも花村さんに寄り付かないだろうし。少しは安心だね、花村さん」
赤松くんが、私に向かってパチッと片目を閉じる。
「い、いくらおばあさんの恩があるからって、こんな女が仮にも璃久さんの彼女だなんて……オレは認めないですから!」
……う。村崎くんに、睨まれてしまった。
彼には、これまでにも何度か睨まれてるから。
あまり良く思われていないのかもしれない。
「改めて、これからよろしくな……栞里」
え。黒澤くん今、私のことを名前で……。
不意打ちの名前呼びに、私の胸が小さく跳ねた。
出会ったばかりだけど……黒澤くんのことは、信じて良いのかも。このとき私は、直感的にそう思った。
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
こうして、ヤンキー高校での新たな学校生活が幕を開けたのだった。