黒澤くんの一途な愛
家から学校までの道を、黒澤くんに手を引かれながら歩く。
「ちょっと、黒澤くん。私たちはあくまでも、仮の恋人同士なんだから。何もお母さんにまで、彼氏って言わなくてもいいじゃない!」
「どこで進藤が話を聞いてるか分からないし、周囲にもそういうことにしておくほうが良いだろ」
だとしても、勝手に彼氏だなんて言わないで欲しかった。
できれば親には、恋人のフリじゃなくて、ちゃんと正式にお付き合いしてる人を彼氏だって紹介したかったのに!
「もういい」
なぜか無性に腹が立ってしまった私は、繋がれたままだった黒澤くんの手を振りほどくと、早足で歩きだす。
そもそも黒澤くんは、私を進藤くんから守るために彼氏のフリをしてくれてるのに。
こんな些細なことで腹を立てるなんて、私ってほんと可愛くないなぁ。
「栞里!」
「え?」
名前を呼ばれたと思ったら、黒澤くんに突然肩を抱き寄せられ、身体が密着して心臓が跳ね上がる。
なっ、なに!?