黒澤くんの一途な愛


一体何事かとそちらに目をやると、廊下で不良の男子二人が取っ組み合いのケンカをするのが、教室の開いた窓から見えた。


「う、うそ。やだ、ケンカ!?」


再び窓ガラスの割れる大きな音がし、私は両耳を手で塞ぐ。


「ここは、ケンカ好きの不良たちが集まる学校だから。器物破損や暴力行為なんて、日常茶飯事だよ」


慣れた様子で話す蘭菜ちゃん。


「そ、そうなの?」


この学校に来るまで喧嘩や暴力とは無縁だった私は、廊下で今も殴り合いを続ける彼らを見てビクビクしてしまう。


「先生たちが注意しても、誰も言うことを聞かないから。先生ももうお手上げ状態でね」

「だけど、いくら何でもあのケンカ、誰かが止めなきゃダメだよね?!」

「うん。でも、心配しなくても大丈夫だよ」

「え?」


小さく微笑む蘭菜ちゃんに、私が首を傾けたときだった。


「……おい」


氷のように冷たい声が、廊下に響いた。

< 32 / 113 >

この作品をシェア

pagetop