黒澤くんの一途な愛
一体何事かとそちらに目をやると、廊下で不良の男子二人が取っ組み合いのケンカをするのが、教室の開いた窓から見えた。
「う、うそ。やだ、ケンカ!?」
再び窓ガラスの割れる大きな音がし、私は両耳を手で塞ぐ。
「ここは、ケンカ好きの不良たちが集まる学校だから。器物破損や暴力行為なんて、日常茶飯事だよ」
慣れた様子で話す蘭菜ちゃん。
「そ、そうなの?」
この学校に来るまで喧嘩や暴力とは無縁だった私は、廊下で今も殴り合いを続ける彼らを見てビクビクしてしまう。
「先生たちが注意しても、誰も言うことを聞かないから。先生ももうお手上げ状態でね」
「だけど、いくら何でもあのケンカ、誰かが止めなきゃダメだよね?!」
「うん。でも、心配しなくても大丈夫だよ」
「え?」
小さく微笑む蘭菜ちゃんに、私が首を傾けたときだった。
「……おい」
氷のように冷たい声が、廊下に響いた。