黒澤くんの一途な愛
少し睨んでいるようにも見えるため、恐る恐る聞いてみると、仏頂面のまま村崎くんが口を開く。
「アンタ、前髪が乱れてる」
「え!?」
うそ。さっき、手櫛で整えたはずのに。
「直してあげるから、じっとしてて」
こちらへと伸びてきた指に、髪を優しくすかれた。
「はい。いいよ」
「あ、ありがとう……」
「ったく。アンタ、仮にも璃久さんの彼女なら、身だしなみはちゃんとしてよ」
「っう……はい」
いつもよりも優しくしてもらえたなと思ったら、鋭い一撃を食らってしまった。
私が肩を落としていると、村崎くんがホウキを手にして中庭を掃き始めた。
「オレも手伝うよ……こういうとき、璃久さんならきっと、放っておかないだろうし」
う、うそ。まさか、村崎くんが手伝ってくれるなんて。
「ありがとう」
「……別に」
そっけなく答える村崎くんの耳は、ほんのりと赤い。
「村崎くん、黒澤くんと仲良いんだね」
「璃久さんは中学の頃、不良のパシリにされてたオレを助けてくれたんだよ。不良の奴らを殴り飛ばしてさ。璃久さんは強くて優しくて、ほんとかっこいいんだ」
「へぇ」
黒澤くんの話をする村崎くんの目は、キラキラと輝いていて。
黒澤くんのことが本当に好きなんだってことが、伝わってきた。