黒澤くんの一途な愛
それから、黒澤くんと赤松くんも手伝ってくれて。
みんなのお陰で、中庭の掃除を何とか終わらせることができた。
「みんな、手伝ってくれて本当にありがとう」
──ぐーっ。
「……あっ」
掃除が終わってホッとしたのか、私のお腹が小さく鳴った。
「栞里、もしかして腹が減ったのか?」
黒澤くんに真顔で尋ねられ、私は頬が熱くなる。
うわぁ〜。お腹の音、黒澤くんに聞かれたなんて! は、恥ずかしい……。
「なあ、栞里。手、出せよ」
「手?」
黒澤くんに言われた通りに右手を差し出すと、彼は私の手のひらに何かをのせた。
それは、イチゴのキャンディやチョコレート。
「それ、やるよ。中庭の掃除、最後まで一生懸命頑張った褒美だ」
「褒美?」
「ああ。お前、そういう甘いお菓子が好きだって、前に言ってただろ?」
そういえば。黒澤くんのおばあちゃんを助けたお礼にと、黒澤くんにカフェに連れていってもらった日。
黒澤くんに何が好きなのか聞かれて、甘いものが好きだと答えたことがあった。
「そのお菓子、他校の女子からもらったんだけど。俺、甘いモンは苦手だから。良かったら、栞里にと思って。貰い物で悪いけど」
「ううん、嬉しい」
まさか、黒澤くんが覚えてくれていたなんて……。