黒澤くんの一途な愛
5. 守ってくれた
ある日の昼休み。
借りていた本を図書室に返却し終えた私が、廊下を歩いていると。
「ふざけんなよっ!」
「文句あるなら、かかってこいや」
ふたりの男子が、睨み合いのケンカをしている場面に遭遇してしまった。
しかもそのうちの一人は、銀髪ヤンキーの進藤くんだ。
黒澤くんのおばあちゃんを助けて以来、進藤くんには目の敵にされているから。
なるべく、彼がいるところを歩くのは避けたい。
でも、ここを通らないと教室には戻れないし……どうしよう。
「おいっ」
顎ピアスの男子が、進藤くんの胸ぐらを掴みかかった。
ふたりは、鋭い目つきで互いを睨み合っている。
ケンカの原因が何なのかは分からないけど。
まだ当分の間、ケンカは終わりそうもないし。次の授業は移動教室だから。
ケンカが終わるまで、待っていられない。
よし。ここは、そーっと通ろう。
進藤くんの視界に入らないように、なるべく廊下の端のほうを歩けばいけるかな。
しかし、そう思って歩き始めたタイミングが悪かった。
私が二人の横を通りすぎた瞬間、顎ピアスの男子が進藤くんに殴りかかり、進藤くんがこちらに向かって吹っ飛んできた。