黒澤くんの一途な愛
「そうか。君、転校生だからウチのこと知らないよね。あいつ、黒澤璃久っていうんだけど、この学校のトップなんだ」
「トップ??」
「ああ。この学校で一番強い奴ってこと。黒澤は、ここ福羽学園で長らくトップに君臨していた先輩を入学早々に倒してさ。ケンカは負け知らずで、マジすげぇんだよ」
「へぇ」
「もちろんケンカだけでなく、あの端正な顔立ちで勉強も運動もできるから。男子はあいつに憧れる奴も多いんだ」
「そうなんですね」
ようするに、人気者ってことだよね?
「あっ。俺、青垣 楽っていうんだ。よろしく」
「は、花村です。よろしくお願いします」
青髪鼻ピアスくん改め青垣くんと私は、固く握手する。
青垣くんはてっきり怖い人なのかと思ったら、話してみたら意外とそうでもなさそう……?
青垣くんによると、福羽学園は元々男子校だったということもあり、女子が圧倒的に少ないらしい。
そして、未だに女子がなかなか集まらない要因は、この学校はケンカ好きの不良たちが集う通称ヤンキー高校だから。
「花村さん、もし学校で何か分からないこととかあったら俺に聞いてよね。同じ2年だし」
「うん、ありがとう!」
青垣くん、いい人だ。やっぱり、人は見た目で決めつけたらダメだなぁ。
そう思いつつも、さっきの人の第一印象は最悪だったから。
トップだかなんだか知らないけど、あの人……黒澤くんとはなるべく関わらないようにしよう。
小さくなっていく黒澤くんの背中を見つめながら、私は密かに決意した。