黒澤くんの一途な愛


そうして、黒澤くんにお姫様抱っこされたまま、保健室に到着。


部屋の中に入ると、ほんのりと薬品の匂いがした。


黒澤くんは、私をベッドに座らせてくれる。


「先生いないね」


先生どころか、私たち以外は誰もいない。


「とりあえず、先に冷やすから。栞里、靴下脱いで」

「分かった」


黒澤くんに言われた通りに靴下を脱ぐと、腫れた足首が露わになった。


心做しか、先ほどよりも腫れがひどくなっているように見える。


黒澤くんは氷嚢(ひょうのう)を見つけたらしく、冷凍庫から出した氷を入れて、足首に当ててくれた。


「……」


黒澤くんはベッドに座っている私の前に膝をつき、黙って私の足首を氷嚢で冷やし続けてくれている。


二人きりの保健室は、物音ひとつしない。


「そ、そういえば黒澤くん。最近、おばあさんの足の具合はどう?」


前に街中で黒澤くんのおばあさんが進藤くんとぶつかったときに、転んで足を捻っていたことをふと思い出した私は彼に聞いてみる。


「ああ……ばあちゃん、もうすっかり良くなって。いつも通り、ぴんぴんしてるよ」

「そっか。良かったぁ」

「あのときは、ほんとありがとうな」


黒澤くんの切れ長の目が、細められる。


息を飲むほど柔らかな笑顔を見せられ、胸の鼓動が大きく跳ねた。

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