黒澤くんの一途な愛
「う、ううん。お礼を言うのは、こっちのほうだよ」
私は思わず、黒澤くんから目をそらしてしまった。
「こうして、保健室まで連れてきてくれてて……どうもありがとう」
「おう」
「あの、黒澤くん。次、移動教室でしょ? 私のことは良いから、そろそろ戻ったほうが良いんじゃ……?」
保健室の壁時計を見ると、いつの間にか予鈴が鳴るまであと10分を切っていた。
「……いい。まだ時間あるし、栞里のことが心配だから。もう少しここにいる」
さっきのお姫様抱っこみたいに、たまに強引なところもあるけど。
ケンカに巻き込まれた私を守ってくれたり、こうして手当をしてくれたりして。
黒澤くんは、ほんとに優しいな。
今までは不良やヤンキーって、怖いイメージしかなかったけど。
黒澤くんたちと関わるようになって、決してそんな人ばかりじゃないんだなって思うようになった。
結局、保健室に先生が戻ってくるまでの約20分間、黒澤くんは私の足首をずっと冷やし続けてくれていた。
おかげで腫れも随分と引いて、痛みも和らいだのだった。