黒澤くんの一途な愛


背筋を、スッと冷たいものが這う。


鍵、どこかで落としたのかな?


心当たりがあるとすれば、今日学校でケンカに巻き込まれて進藤くんの身体が私に思いきり当たって、廊下に尻もちをついたあのときだけど……。


いや、もしかしたら違うところで落としたって可能性も……。


「栞里、どうした?」


黒澤くんが、心配そうに私の顔を覗き込んでくる。


「鍵、なくした……」

「え!?」


今の世の中は物騒だから。家の鍵をどこかで落としたと思うと、夜も安心して眠れないし。何より……。


「鍵がなかったら、家族みんなに迷惑をかけちゃう。どうしよう、私のせいでっ」


私の目には、涙が溜まる。


「栞里、ちょっと落ち着け」


不安に苛まれる私とは反対に、黒澤くんは落ち着き払っている。


「そんな、落ち着いてなんかいられないよ。私、今から急いで学校に戻って……」

「おい。待てよ、栞里」


走り出そうとした私を、黒澤くんが呼び止めた。

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