黒澤くんの一途な愛


「ああ、鍵? そういや、さっき落とし物で届いていたような……。ちょっと待ってて」


職員室の中に引き返した先生が、少しして戻ってくる。


「家の鍵って、もしかしてこれかい?」


先生の手のひらには、白いウサギのキーホルダーのついた鍵が。

ウサギの頭には、ピンクのリボンもちゃんとついている。


「あ、あったーーっ!」


私はここが職員室だということも忘れて、思わず叫んでしまった。


「さっき、生徒が届けてくれたんだけど。君の探してた鍵、これで合ってる?」

「はい。この鍵です。ありがとうございます!」


私は先生に向かって、頭を下げた。


「良かったな。鍵、見つかって」

「うん。黒澤くんのお陰だよ。ありがとう」


胸の前で鍵を握りしめると、黒澤くんの眼差しが優しくなった。


「そうだ! 一緒に探すのを手伝ってくれた、他の男の子たちにもお礼を言わなくちゃ」


私が駆け出そうとしたとき、後ろからガシッと手を掴まれてしまった。

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