黒澤くんの一途な愛


「黒澤くん……?」

「他のヤツには、俺が報告するからいい」

「でも」

「ただでさえ鍵を探してる間、ずっと歩き回っていたのに。これ以上動いて、挫いた足首がまた痛くなったらダメだろ」


そう言われると、さすがに何も言い返すことはできなくて。


私は、おとなしく首を縦に振った。


「黒澤くんって、意外と心配性?」

「そんなこと、初めて言われたな」


黒澤くんが、私が持っていた鍵を横から奪うように取った。


「ふーん。こいつが、栞里がさっき言ってたウサギか」

「そうだよ。中学の頃から好きなんだけど、目がくりっとしてて可愛いでしょう?」

「確かに可愛いけど……俺からしたら、このウサギよりも栞里のほうが可愛いけどな」

「え?」


予想外の言葉に、私は口を開いたままポカンとしてしまう。


黒澤くん、私のことを『可愛い』って言った?


「ねぇ。黒澤くん、今……」

「何でもない。鍵、もう無くすんじゃねーぞ」

「う、うん」

「俺、鍵が見つかったって他の奴らに言ってくるから。栞里は、座って待ってろ」


そう言って早足で歩いていく黒澤くんの横顔は、ほんのりと赤くなっていた。

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