黒澤くんの一途な愛


そして、放課後。


私と黒澤くんは、学校近くのファストフード店にやって来た。


黒澤くんが柄にもなく『デート』なんて言うから、つい身構えてしまったけど……。


私は、黒澤くんの整った横顔を見つめる。


「思い返してみれば、放課後一緒に帰ることはあっても、二人で寄り道することはなかったなと思って」

「確かに、そうだね」


前に黒澤くんとカフェに行ったときは、村崎くんや赤松くんも一緒だったから。


「たまにはお前とこうして、二人だけで出かけてみたくなってな」


黒澤くんの言葉に、頬がゆるむ。


「栞里と来られて嬉しいよ」

「わ、私もだよ」


黒澤くんに嬉しいって言われると、私もすごく嬉しい気持ちになる。


「買ってくるから。栞里は、席で待ってて」

「うん」


言われたとおりに座って待っていると、少しして黒澤くんが二人分のハンバーガーとポテトが載ったトレイを手に戻ってきた。


「はい。栞里の分」

「ありがとう……そうだ、お金!」


私はスクールバッグから慌てて財布を取り出し、二人分のハンバーガー代を黒澤くんに渡す。


だけど、そのお金はすぐに押し返されてしまった。

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