黒澤くんの一途な愛


「ご、ごめんなさい!」


私は慌てて、参考書を掴んでいた手をパッと離した。


「いえ。俺のほうこそ……」


私と同時に本を掴んだのは、黒のパーカーを着た、同世代くらいの黒髪の男の子。

メガネをかけていて、左目は長い前髪で覆われている。


「あの、俺は大丈夫なので。良かったらその参考書、どうぞ」

「いえ。私でなく、あなたのほうが……」


お互いに譲り合っていると、パーカーの男の子が「あれ?」と、目を大きく見開いた。


「もしかして、花村さん?!」

「えっと……?」


名前を呼ばれるも、すぐには誰だか分からなくて、私は首を傾ける。


「君、花村栞里ちゃんだよね!? 俺のこと、覚えてない? 俺、東小学校で一緒だった緋山(ひやま)(とおる)!」

「えっ、うそ! あなた、透くん!?」

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