黒澤くんの一途な愛


「ちょっと、あなた! さっきから聞いてたら、無茶苦茶なことばっかり言って!」

「あ?」


おばあさんに掴みかかろうとしていたヤンキーが、こちらを向いた。


「治療費を出すのは、おばあさんじゃなくてあなたのほうでしょう!?」

「はあ? なんだ、てめぇ」


ひいいっ。


鋭い目つきでヤンキーに睨みつけられた私は、あまりの怖さに震え上がる。


でも、ここで負けてちゃダメだ。ちゃんと言わなきゃ。


「あっ、あなたが先にぶつかったせいで、おばあさんが転倒して怪我したんじゃない。私、見てたんだから。おばあさんに、ちゃんと謝って!」

「なんだとお?」


逆鱗に触れたのか、顔を赤くさせた銀髪ヤンキーが足早にこちらに向かってくる。


とりあえず、おばあさんから私に矛先が向いたのは良いけど……。ど、どうしよう。


怒りでつい口調は強くなってしまったけど、頭の中は真っ白で。心臓は、さっきからずっとバクバクしている。


私の焦りとは反対に、銀髪ヤンキーは殴りかかる勢いでどんどんこちらに迫ってくる。


よし、こうなったら……!

< 8 / 106 >

この作品をシェア

pagetop