黒澤くんの一途な愛


「……いでっ」


私はヤンキーの脛あたりに、ドカッと一発蹴りを入れた。


「くっ。こんの、アマァ……ッ!」


わわ、どうしよう。ヤンキーに、思わず蹴り入れちゃったよお。


「よくもやってくれたなぁ!」

「ひぃぃ。ご、ごめんなさい!」


ヤンキーの顔が先ほどとは比べ物にならないくらい真っ赤になり、いよいよもうダメかと思ったそのとき──。


「おまわりさん、こっちです!」


通行人の誰かが、警官を連れてこちらに走ってくるのが見えた。


「くそっ。覚えてろよ」


さすがにまずいと思ったのか、お決まりのセリフを残して銀髪ヤンキーは走っていった。


た、助かった……。そうだ、おばあさん!


「大丈夫ですか!?」


私はすぐさま、道端でまだ座り込んだままのおばあさんに駆け寄る。

< 9 / 106 >

この作品をシェア

pagetop