初恋を君と 短編集
♡♡♡祐馬side




「あのさ、祐馬。」
珍しく大翔が悲しい顔をして俺をみている。

なんだ。 

「フラれたのか?」「縁起でもないこと言うなよ」


じゃあ、なんなんだよ……
「あのさ、俺祐馬に言いたい事があってさ」



「自分の気持ち大切にしろよ。」「は」
「そんなんだったから、きっと愛音も…」

急に黙り込む大翔。
「愛音も、なんだよ?」「と、とにかく!」

「素直になれよ。じゃあなっ!」

そう言って、教室から出て行った。
なんなんだったんだ。

「ーーー祐馬くん。」

後ろを振り向いた時、君が下を向いて立っていたんだ。
「話したい事があるんだ。」


俺の心臓は、心拍数が増して、
ドクドクと鳴った。

「愛音ー。」
初めて彼女を前にして名前を呼んだ。



ーーー


「愛音ー。」

え。名前呼んでくれた。
そのことに思わず目を見開く。


こんな時なのに胸がときめいた。
驚いた顔をなおし、にっこり自然な笑顔を
浮かべた。


「あのね、祐馬くん。これで私最後にするからさ……最後まで聞いてね。」「……あぁ」

私は立ちすくんでいる祐馬くんに
一歩


二歩


三歩


もう30cmくらいの近さ。

「私。」



「祐馬くんの事好きです。
付き合ってくださ、い」
ぎゅっと彼の私より大きい体を抱きしめた。


でもその温もりが、私の思い出をかき乱す。

そのせいで涙が頬をつたう。
けど、祐馬くんが濡れるのは少しでも
減らさなきゃ……
私は話して一歩後ずさろうとした。


「ごめんね。いつも困らせ「なんで…、っ」




ぎゅっ……と抱きしめられた。
「え、」


私のひどく掠れた声も、彼のシャツで埋められる。

「俺のこと好きになってごめんね。って言われてるみたいでイラつく。」
祐馬くん。私のせいでいつも楽しくなさそうじゃん。

なんで意識させ直すようなこと言うの?

「大翔とも、あいつとも仲良く接してんのもうざい。」

「……え?」

「愛音はなんもわかってないよ」

「……………、、、」
最後なのに、バカみたい。

期待、しちゃった。

「バイバイ。祐馬くん。」
抱きしめられたその腕から抜け出そうとする。


「俺のこと好きなんじゃないの?」



馬鹿だなぁ、私。


「………好きだった…っ」

私はそれだけ言って背を向けて走り出す。

これで最後だ。

ありがとうそして、さようなら。




祐馬くん。

ーーー
トン、トン、トン

階段をおりていく。

「終わったんだなぁ………。」

ポト。
「あれ、雨降ってきちゃった..」

傘持ってないよ。
急いで、帰ろう。
「愛音……。。」

そこには大翔が傘を刺し、立っていた。

「ひ、ろと……。。」

耐えれなかった。
「あ、あぁ……。うぁぁ。。」
「……」

大翔は静かに近づいて、私を傘に入れた。
そのまま私が泣き止むまで待っていてくれた。

♡♡


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