初恋を君と 短編集
1度はぁと言った彼の口から言葉が出る。
「………鈍感だから気づいてないのかもしれないけど……さ、」

「……………へ?ど、鈍感っ?」
「そ、鈍感。」

口を開いたかと思えば、悪口っ?
私そんなに鈍い………?

「萩野。お前は……まぁ、俺みたいなキャラが言うのもなんだけどさ、いわゆるー、原石なんだよ。」

「げ、んせき…」
私、そんなにいいものじゃないよ。
劣化した窓ガラス。

可愛いヒロインみたいにか弱くはないけれど
日々日に汚れていくモノ。

でも君が言ってくれた言葉はなんかが違うの。

「だから、まだ磨き残しとか綺麗になれる場所があるってわけ。」

「私………が……?」

何を頑張っても上手くいかない私がよくなれることなんてあるの?
「萩野は、気づいてないだけだって。言ったろ、鈍感って。研磨して、最初と比べ物にならないくらい光ってそしたらさ……


あいつらを驚かしてやろうぜ。」

私をからかったりする人達はもちろん信用出来ない。人気者なんだって分かってるけど。

でも……、

「わ、かった。………頑張る。」

「ん、その調子。」
この人の言葉に、笑顔に答えたくなるのは。

この感情は………なんだろう?

「じゃ、萩野、ついてきて。」

自信げに微笑む彼の手を取り、私は1歩を踏み出した。





「………ーうん。」



ーーーー



「さっさいくぞ」

「でもやっ……ぱ、2人のとこ見られたらっ…」
「大丈夫だって、」

わたしの手をギュッと掴んで離さない多磨くん。
わたしなんかといたら多磨くんに迷惑がっ……!

「…、あのさぁ……俺に迷惑とか考えんなよ。俺が好きでやってんだから。」

っ……、えすぱー?
ってか……多磨くん、クラスの時となんか
雰囲気とか違うようなっ………

「言っとくけど、これ素だから」

や、う、うそぉ………?でも、こっちの方が表情が軽そう。


「……、多磨くんが素の方が楽ならそれでいいと思い………ます。」

「…………へん」「……そ……か」

「ま、クラスの時も俺自身だから別に辛くないよ。ただ今はこの方が萩野が言うこと聞くかなーみたいな。」

「そ、そんな…思いつきで………」

なんか、太陽みたいで裏なんてない人気者だと思ってたけど、違うよね……
裏がないなんて勝手に決めつけるわたしが悪いね……
「えと、わたしはほんとにちゃんと会話してくれてることだけでも嬉しいよ」

そう言って軽くわらった。


那月side


「えと、わたしはほんとにちゃんと会話してくれることだけでも嬉しいよ。」

こんな考えを植え付けた彼女の笑い方は、
不自然で気持ち悪かった。

…………植え付けた彼女を助けなかったのは俺のくせにな。



萩野はいつからこう笑ってしまうようになって………いや、させてしまったんだろう。






小学生の頃の優しい太陽みたいな笑顔が見らなくなったのは助けられなかったから。

中学生の入学式の時はもうこうだった。


さらに酷くなっていったけれど。
きっと、小6の最後らへんとかからだと思う。

大体小6から友情がゆがんでくるから。

その時彼女を助けることができなかった俺。

あの時逃げて、今になるまで逃げ続けて俺に
助ける資格なんてないかもしれない。
けど、俺が好きなのはそんな作ったような笑顔じゃない。

萩野…………、李梨の心から笑った顔が
"また"みたい。

李梨には李梨って言う名前があってる。

今は、諦めてしまったせいでくすんでいる けど、隠れて光ってることも知ってる。

光を見せてほしい、李梨。俺が自信つけてあげるから……

< 35 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop