名も無き君へ捧ぐ
「そう言えば小一の時でしたっけ、近所の犬に噛まれて大泣きしてましたよね」
「あったあった!あれはね、本当に痛かったの。ていうか、守護霊なら何で助けてくれなかったの?」
「知ってます?大難が小難になるって言葉。難を出来るだけ小さくすることも大事なんですよ」
「ふーーーん。あっそう。すごいんだねー。じゃあ、鉄棒から落ちた時も?」
「当たり前じゃないすか。朝飯前です。病院送りにならなかったでしょ?」
「確かにね」
小さい頃の話題は尽きなかった。
ユーレイと言えど他人なのに、全部話が通じた。
おかしな世界があったもんだ。
気がつけば深夜3時をまわり、ケーキもワインも無くなっていた。
こんなに誰かと沢山話したの、いつぶりだっけ。
ふわふわした気持ちのまま、いつの間にか眠りに落ちていた。