そばにいてくれるなら

「……あ、兄が……亡くなって…」

「…」

「…い、いちねん、経ったのに…
ずっと、く、苦しくて…」

「…」


泣きながら
必死に言葉を絞り出す私を
その人は静かに見つめて、黙って耳を傾ける



「……学校にも、家にも、いたく…なくて…」


「いつ、も…見かけていた、姿がない、のが
声が、聞こえないのが…」


「そこに、…いない、って
現実を、つ、突きつけられるのが、くるしい…」


「ふ、双子なの、に…
私の時間だけ進んでいって…」


「兄を、追い越して…大人になっていくことが
たまらなく、い、嫌で…」



何も知らない

私のことも、兄のことも、過去の出来事も
何も知らない相手だったから

口にできた

普段、必死に抑えている、隠してる

苦しい気持ち、悲しい気持ち、寂しい気持ち



「……でも、こんな、じゃ
兄も、家族も、きっと、心配するから」


「だから、頑張って
毎日、学校に行って、笑って、しゃべって
家族と過ごして…普通に、生活して…」


「……でも、どうしても
ひとりになると、涙が、出て…」




「……………さびしい」