そばにいてくれるなら
「…これ以上、太ったら
速水さんと、らいさんのせいですからね」

「大丈夫だよ。りつ、元々が細いし」

「うぅ…また、甘やかす言葉を…」


小さく唸りながら、葛藤する私

そんな私を眺めながら
らいさんは、ふと思ったように口を開いた


「それよりさ、りつ」

「はい?」

「るいの事は、名前で呼ばないの?」

「え?」

「いや、ずっと「速水さん」だから」

「…そういえば、そうですね」


指摘されて、自覚する

最初に『速水』で自己紹介されたからか
速水さんの事は
すっかり『速水さん』で定着してしまってた


「名前で呼んだら、喜ぶと思うよ」

「本当ですか」

「うん」

「じゃあ、呼んでみます」

「うん」


……


そこで会話が途切れる


沈黙が流れるけど、気まずくない

らいさんも、特に気にする様子はなく
読みかけの本に、視線を落とし
読書を再開してる


「…」


その綺麗な顔を
無言でしばらく眺めてから

私も、同じように
机に置いていた本を読み始めた
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