そばにいてくれるなら
それ以上は言葉にならなくて

そのまま、また膝に顔を埋めて
泣きじゃくる私



「置いていかれる方も
……置いていく方も、どっちも辛いね」



横からぽつりと呟かれた言葉は
寂しさを含んでいて

それは、同情とか同調とか
そういうものじゃなくて

実際に、同じ痛みを知っている人のものだと
すぐに分かって


顔を上げれば


切なそうに、悲しそうに
遠くを眺めていたその人は

私に顔を向けて、優しく笑った



「ね。帰りたくないならさ
少し俺に付き合ってくれる?」

「…え?」

「あ、誓って
やましいこととかしないから
ちゃんと送り届けるし」

「…」


突然の申し出に戸惑いながらも

人懐っこいその笑顔からは
微塵も警戒心や不信感を感じず

私はそのまま
不思議な雰囲気のその人に連れられて
その場を後にした
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