そばにいてくれるなら



ホールから、賑やかな声が響く
どうやら、お客さんがたくさん来店したみたい

店主さんは気を遣ってくれたけど
ひとりじゃ大変だろう

いつまでも
るいさんを引き留めておくわけにはいかない

慌てて立ち上がる


「……ごめんなさい
お仕事、邪魔になっちゃうから帰ります」

「いいよ
早く帰りたいわけじゃないなら、待ってて
仕事終わったら送るから」


るいさんはテーブルに置いてあった
水の入ったペットボトルと
手に持っていたタオルを私に差し出す


「……ありがとうございます」


お礼を言って、受け取れば

口角を上げたまま、私の頭を撫でて
るいさんは、そのままホールに戻っていった


「…」


ひとりになった途端
どっと疲労が押し寄せて
ふらふらと、再び椅子に座り込む


怒涛の1日となった誕生日


心も身体も、もう限界だった



……キャパオーバー



私はそっと目を閉じて
そのまま、意識を手放した
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