そばにいてくれるなら
5
――……



「りつ」

「……らいさん」



翌日

いつものように
人気のない図書室で
そわそわと、らいさんを待っていた私


「具合、大丈夫?」

「…へ……」


現れたらいさんは
開口一番、私の身体を心配する

てっきり、気まずい沈黙が流れるものかと
思っていたから

いつもと変わらない態度で
話しかけてくる、らいさんに
私は、呆気に取られてしまう


「まだ、どこか
痛かったり苦しかったりする?」

「…大丈夫、です」

「そう。なら、良かった」

「…」

「今日は数学?それとも、物理?」


私の隣の椅子に腰かけて
かばんから勉強道具を取り出すらいさん

これまた変わらず
勉強を教えてくれようとする
らいさんに私は慌てて声をかける


「あ、あの、らいさん…」

「ん?」

「その…」

「うん」


らいさんは私に体を向けて
じっと、私が口を開くのを待つ

意を決して、私はらいさんに頭を下げた


「……昨日は、ごめんなさい
……介抱してくれたのに…あのまま…」

「ううん。俺が変な事言ったのが悪いから」


ほんの少し、距離を取るような
そんな態度に、私の胸がずきりと痛む


らいさんは、あの日言った言葉を
なかったことにしようとしてる

信じて貰えないと、思ってる

それが当たり前の反応だって

おかしいのは自分の方だって


誰かを責めたり、怒ったりせず

自分を、卑下してるわけでもなく

ただ、受け入れてる


……それが、とても悲しくて


必死に言葉を伝える
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