そばにいてくれるなら
見知らぬ場所、見知らぬ人達というのは
おもいのほか、気持ちが楽だった
いつもいつも
見慣れた場所、景色の中に
兄の姿を探してしまうから
だから、兄と繋がるものがなにもない
まっさらな新しい場所は新鮮で
目の前に広がる、その光景に
いつもと違う非日常に
どこか、わくわくする自分がいた
そんな感情が湧いてきたのも
随分、久しぶりだった
他愛ない会話を重ねながら
店をまわって
気づけば、すっかり
あたりは真っ暗になっていた
「ここで大丈夫?」
「はい、ありがとうございます」
「ううん。ごめんね
たくさん連れ回して」
家の近くまで送ってくれたその人に
頭を下げれば
その人は苦笑しながら首を横に振る
「……久しぶりに、楽しいって…感じれた
ありがとうございます」
「…なら、良かった」
呟いた言葉に
安心したように目尻を下げる
…。
意識すればするほど
話し方も、雰囲気も、浮かべる表情も
この人の至るところに
兄の面影を見つけてしまって
離れがたくなる
「……あの、」
「ん?」
「……また、お話、できますか?」
困らせてしまうだろうかと
不安に思いながらも
ここで、終わらせたくなくて
遠慮がちに向けた言葉に
目を丸くさせた後
「きみが、嫌じゃないなら」
その人は、表情を和らげて答えた
「私、りつです。水瀬(みなせ)りつ」
「俺は、速水(はやみ)」
『同じ』笑顔で私を見る
速水さんと出会ったこの日は、兄の命日だった
おもいのほか、気持ちが楽だった
いつもいつも
見慣れた場所、景色の中に
兄の姿を探してしまうから
だから、兄と繋がるものがなにもない
まっさらな新しい場所は新鮮で
目の前に広がる、その光景に
いつもと違う非日常に
どこか、わくわくする自分がいた
そんな感情が湧いてきたのも
随分、久しぶりだった
他愛ない会話を重ねながら
店をまわって
気づけば、すっかり
あたりは真っ暗になっていた
「ここで大丈夫?」
「はい、ありがとうございます」
「ううん。ごめんね
たくさん連れ回して」
家の近くまで送ってくれたその人に
頭を下げれば
その人は苦笑しながら首を横に振る
「……久しぶりに、楽しいって…感じれた
ありがとうございます」
「…なら、良かった」
呟いた言葉に
安心したように目尻を下げる
…。
意識すればするほど
話し方も、雰囲気も、浮かべる表情も
この人の至るところに
兄の面影を見つけてしまって
離れがたくなる
「……あの、」
「ん?」
「……また、お話、できますか?」
困らせてしまうだろうかと
不安に思いながらも
ここで、終わらせたくなくて
遠慮がちに向けた言葉に
目を丸くさせた後
「きみが、嫌じゃないなら」
その人は、表情を和らげて答えた
「私、りつです。水瀬(みなせ)りつ」
「俺は、速水(はやみ)」
『同じ』笑顔で私を見る
速水さんと出会ったこの日は、兄の命日だった