そばにいてくれるなら
そんなことはないと否定しようとした瞬間に


「俺ね、死のうとしたんだ」


衝撃的な言葉が
らいさんの口からこぼれて

私は言葉を飲み込んだ


らいさんは、うつむきがちに
独白するように、言葉を重ねていく


「だって、おかしい
双子なのに、俺だけ時間が進むなんて」


「この先を、るい無しで生きていくなんて
考えられなくて」


「半分欠けたまま、生きていくなんて
耐えられないって思った」


「だから、死のうとして」


「るいと同じところに行こうとして」


「でも、るいに止められて、死ねなかった」


「るいは、ずっとそばにいるから
このまま、そばにいるから死ぬなって」


「るいの優しさに甘えて
わがままを言って、ここに縛り付けて」


口調は淡々としているけど
表情は苦悩に満ちていた

らいさんが抱えている
痛みや悲しみ、苦しさや辛さが

ひしひしと伝わってくる


双子ならではの心の結びつき

深い愛情、執着、依存心

それは、多分普通の人には理解できない感覚

別々の人間だけど
自分の一部も同然の存在

だからこそ、それを失った時の

痛みも、喪失感も、絶望も

他人には計り知れないくらい大きい




………この人は



「…りつを見てて、思ったんだ
俺と『同じ』きみが
俺より、小さなきみが
必死にあがいてるんだから
俺も、頑張らなきゃいけないって」



「そろそろ、るいを解放してあげないとって」



「……ちゃんと、お別れしないとって」



苦しそうに呟いて


寂しそうに笑う



……この人は、もうひとりの私だ



同じ痛みを、苦しみを知っている

悲しくて、寂しくて仕方なくて

それでも、必死に前に進もうとしている



痛々しくて、でも、尊い




身体は勝手に動いていた


「…」


言葉にできない感情を分かち合うように
らいさんを抱き締める


腕の中のらいさんは、少しだけ
驚いたように目を開いて


それから


すがるように、私の背中に手をまわして


静かに目を閉じた
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