トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

授業を受けるわ。

 さて、満足するくらい掃除をしていると、いつの間にか朝食の時間になったわ。

 食堂に向かえば良いのよね。普段はベネット邸からこの学園に通っていたから、なんだか新鮮ね。

 食堂まで足を進め、並んでいる人たちの後ろに立ち、自分の番がくるのを待つ。

 朝食を受け取って辺りを見渡すと、他の人たちがこちらを見ていることに気付く。ひそひそと話されているみたいで、良い気分ではない。マーセルは、この状況をどう思っているのかしらね。

 あまり人のいない場所に座って、朝食のロールパンを一口サイズにちぎり、ぱくりと食べる。

 普段、食堂って使わないから……なんだか不思議な感じだわ。コンソメスープを飲んでゆっくりと息を吐く。……ああ、こんなに緊張しない食事って、初めてかもしれない。

 そして、そんな中。わたくしを見てひそひそと話している人たちが視界に入る。

 注目されるのは、慣れているから気にならないのだけど……せっかくこんなに美味しいのだから、みんなも味わって食べれば良いのに。

 食堂の食事がこんなに美味しかったなんて、知らなかったわ。すべて美味しくいただいて、トレーを持って返却する。わたくしは思わず、食堂の方に話しかけた。

「ごちそうさまでした。とても美味しくいただきましたわ」
「あ、ありがとうございます……?」
< 13 / 64 >

この作品をシェア

pagetop