トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「申し訳ありません、マティス殿下。わたくし、カミラさまにお話がありますの。二人きりで」
「しかし、それはあまりにも危険ではないか?」
彼にとって『わたくし』は危険人物なのね。愛されていないことは知っていたけれど、チクチクと胸が痛むわ。
「大丈夫です。ねえ、『カミラさま』?」
「え? ええ……」
彼女ははっとしたように顔を上げ、こちらをじっと見ている。そして、きゅっと唇を結んで神妙な表情でうなずいた。
「それでは、ごきげんよう」
すっとカーテシーをして、彼から離れる。他の学生たちも、わたくしたちのことを見ていた。その視線を振り切るように彼女の手を取って歩きだす。
そして、空いている教室に入り、扉を閉めて――目の前の『カミラ』を見つめた。
「貴女、マーセルね?」
「はい。……では、あなたはカミラさま? これはどういうことですか? 私が憎いから……マティスさまを奪ったから、こんな嫌がらせを!?」
被害妄想もここまでくれば天晴ね。ふるふると震えて泣く姿を見て、わたくしが作り上げた『完璧な公爵令嬢』の像がガラガラと崩れていくことを予感し、長々とため息を吐く。
「がんばってマティスさまを手に入れたのに……!」
「貴女、がんばるところが違うのではなくて? ここは学園よ?」
「しかし、それはあまりにも危険ではないか?」
彼にとって『わたくし』は危険人物なのね。愛されていないことは知っていたけれど、チクチクと胸が痛むわ。
「大丈夫です。ねえ、『カミラさま』?」
「え? ええ……」
彼女ははっとしたように顔を上げ、こちらをじっと見ている。そして、きゅっと唇を結んで神妙な表情でうなずいた。
「それでは、ごきげんよう」
すっとカーテシーをして、彼から離れる。他の学生たちも、わたくしたちのことを見ていた。その視線を振り切るように彼女の手を取って歩きだす。
そして、空いている教室に入り、扉を閉めて――目の前の『カミラ』を見つめた。
「貴女、マーセルね?」
「はい。……では、あなたはカミラさま? これはどういうことですか? 私が憎いから……マティスさまを奪ったから、こんな嫌がらせを!?」
被害妄想もここまでくれば天晴ね。ふるふると震えて泣く姿を見て、わたくしが作り上げた『完璧な公爵令嬢』の像がガラガラと崩れていくことを予感し、長々とため息を吐く。
「がんばってマティスさまを手に入れたのに……!」
「貴女、がんばるところが違うのではなくて? ここは学園よ?」